「桜木……?」
高梨くんの顔が近づいてくるのがわかる。
断らなきゃ。
なのに、言葉がでてこない。
「……ゃっ」
ギュッと目を瞑った時だった。
グイッと横から腕を引っ張られ、体がよろける。
トンと、何かに支えられて、顔を上げれば、思わず目を丸くした。
「と、ま……?」
あたしの体を支えてくれたのは、燈真の胸板。
「行くぞ」
「……ぇ、ちょ」
「おい、邪魔すんなよっ!!」
「……こいつの顔、ちゃんと見てからにしろよ」
燈真はそう言って、あたしの手を引っ張りながら歩く。
こいつの背中……こんなに、大きいんだ。
あたしより、年下なのに。
……力、強かった。
……あたりまえのように一緒に暮らしてるけど、燈真は、
男なんだ。

