お昼過ぎに、ガチャリと、玄関のドアが開く音がした。

あたしはベッドから飛び出して、階段を降りていく。


「遅い! 腹減った!」

「……可愛げのねー言葉」

「うっさいっ!!」

「“寂しかった”とか言えねーのか。ほら、プリン買ってきた」

「なんでプリン?」

「俺が好きだから」

「ぷっ」

「食わせねーぞ」

「嘘! ありがと、萩野っ!」

萩野は何も言わず、ただ頬を少し赤くして、リビングへと行ってしまった。

あたしも、クスッと小さく笑い、リビングへと入る。

「体調は?」

「んー明日は行けるかな」

「ふぅん」

「あれ? 萩野、制服のズボン汚れてるよ? 転んだの?」

萩野は何も言わずに「少し通った道の水たまりが飛んだ」と吐き捨てるように言った。