一瞬、ケータイで自宅に電話して萩野に来てもらおうかと思ったけど、あたしはやめた。
向こうのお望み通りぬれて帰りますよ。
あたしは歩いて土砂降りの雨の中歩く。
通り過ぎる人は、全員あたしを不思議な目で見る。
当たり前だ。傘をささずに、歩いてるんだから。
家に着けば、リビングで偉そうにソファに座ってた萩野が、目をまん丸にして、あたしを見る。
「なに、頭おかしくなった?」
「別に」
バスタオルで体を拭く。
その間に、『ピロン』なんて音が台所から聞こえてきた。
「はい」
「……なに、これ」
「ホットミルク。風邪惹かれたらたまんないんだよ」
「……ありがとう」
あたしは素直にコップを受け取る。
……温かい。
あたしはゆっくりとホットミルクを飲む。

