「……どこの部屋も、お前の親父の部屋なんだけど」
「え?」
……あぁ、そっか。お父さんの部屋は二つあって、そしてもう1つは……お父さんがいるんだ。
「じゃあ、ここで寝る? 布団持ってくるから」
「は?」
「? 嫌?」
「……無防備もいいとこだな、お前」
「はぁ? 嫌ならソファでどうぞ」
「いや、いい」
あたしは布団を一枚もってきて、自分の部屋に敷いた。
「これでいい?」
「ん、サンキュ」
「ぁ、弁当いる?」
「買い弁でいい」
「栄養悪いじゃん。ついでだし、作るよ」
「じゃあ、頼む」
「ん」
……なんか、ちゃんと喋れた気分。
こいつは……あんまり感情を表に出さないから、難しい。

