『じゃあ、お母さんすぐ戻るから』
「うん」
お母さんは『またね』と言って、電話をきった。
泣いてる声には聞こえなかったのかな。
……よかった。
お母さんのことだから、すごい慌てそうだし。
「……燈真」
あたしがそう呟いた瞬間だった。
リビングのドアが開いた。
そこには、腕を組んで壁に寄りかかって偉そうな格好をしている、燈真の姿。
「……嘘……」
「忘れもの、とりにきた」
そう言いながら、燈真は食器棚のところから、マグカップを1つ取り出した。
さっきの……聞こえてないのかな。
まぁ、聞こえてて欲しくないんだけど。