不思議に思いながら拓登の方を見る。更に説明は続いた。



「俺がこの時代にした一つの理由は、あの手紙の内容にあったんだ」


「それって最初に拓登が言ってくれたやつ」


「そう。文章の書き方や硯箱を見た感じでは確かに江戸時代に間違いはない。でも300年続いたこの時代の何処に“この世の安泰”の為に行かなければいけない事があると思う?」


「そうよね..」


そこまで言われて考える。


確かにそうだ、先生が言ってた記憶がある。江戸時代は一番長く平和が続いた時代だって。


「勿論小さな一揆もあったかもしれない、争いもね。ただそれはほとんど武家にとっては関係なかったと思う」


「どうしてそんな事が言えるの?」


「王麗さんが見付けたその硯箱。何処で見付けたって言ってた?」


「えっと近所の公園だけど..」