「そなたが例へ我の足を止めむと、我は行かねばならず。全てはこの世の安泰なる料。分かちて欲しとは言はず。いや、せられば我を憎みて忘れて欲し..まぁ直訳するとこういう事かな?」
手紙を広げながら拓登は続ける。あたしは黙って続きを聞く。
「君がたとえ私の足を止めようと、私は行かなければいけない。全てはこの世の安泰の為。分かって欲しいとは言わない、いや出来るのなら私を憎んで忘れて欲しい..か」
「それってつまりどういう事なの?」
「どういうって、これが手紙に書いてある事だけど?」
「違う、そうだけど!!行くって何処によ!この世の安泰ってどういう事?」
拓登は小さく息を吐いて天井を見上げた。
そしてまっすぐあたしの方に視線を向けると、こう続けた。
「それは俺にも分からないよ」
そんな..
「分からないじゃ困るの!だって、この手紙は..届けるんだから」
「と、届けるって言ったって..」
「拓登、天才なんでしょ?何とか出来るんじゃないの?」


