渋滞の影響もあってか、お母様が家に帰宅したのは深夜になってからだった。普段ならばこの時間、あたしは自分の部屋にこもって本を読んだりしているのだけれども、今日はどうしてもお母様を待ちたくて、まだかまだかと窓を覗いたりしては霧島に叱られていた。

そしてお母様の明るい声が玄関中に響くと同時にあたしも玄関に急いで向かう。


「ただいま、未華」


「おかえりなさい、お母様!」



数週間ぶりに会うお母様は何も変わってなくて、
あたしを見付けた途端走ってあたしを抱きしめてくれた。



「元気だった、未華っ!」


一度離れると、お母様の手があたしの頬に触れる。


「えぇ、お母様も相変わらずで安心致しました」


少し屈んでお辞儀をすると、お母様の笑顔がすぐ近くにある。


「そんなかしこまらないで、今はこの再会を楽しませてちょうだい」


「ですが..また霧島に叱られてしまいます」


じろりと睨みつける。あたしは放課後の事、まだ恨んでるんだからね、と。
霧島は相変わらずの無愛想であたし達親子の再会を黙って見ている。


「まぁまぁ、未華も相変わらずってわけね」


茶目っけたっぷりに答えると、
とりあえず座る事にしたあたし達は手を繋いでソファに腰を下ろした。


座ったと同時に体が浮いたように感じる。


「それで、パリはいかがでしたか?」