「・・・わかんないよぉ・・・。」

「は、琶炉様っ!?涙っ・・・。」

「えっ・・・?」

気づいたら、あたしは泣いていた。

感情が、追いつく前に

頬には、一筋の涙。

「すみません。メイドとしたことが、琶炉様を泣かせてしまうなんて。」

「メ、メイドさんのせいじゃないよ。」

わからない自分が、悔しいんだ。

わからない自分が、情けなくて

それが嫌なんだ。

「琶炉様は、悠様のことをとても大切に思ってらっしゃるのですね。」

「なんで・・・そう思うの?」

「大切でもない方のために、涙は流せませんもの。」

「・・・?」

「大丈夫。きっとすぐにお気づきになられますよ。」

メイドさんは、あたしにニコリと

微笑んだ。

「ありがと・・・。」

「だから、そんなに悩まないでください。今日はもう、お休みになったほうがいいですよ。」

「うん・・・。そうする・・。」

メイドさんは、あたしのことを全部わかってるのだろうか?

嘘のない瞳が、なんだかすごく安心して

心がほっとする。

「ありがとね。」

「どうして、お礼を?」

「今、すごくほっとしてるから。だから、ありがと。」

「私は琶炉様のメイドですもの。主人を安心させるのも仕事ですから。」

そう言って、メイドさんはもう1度微笑んだ。

「おやすみ・・・。」

今日は、少し疲れたからかな。

目を瞑れば、すぐに眠りの闇に

あたしは落ちてしまった。