「藤堂先生、今のお話がヒントですよ」


「金森先生があの子たちに厳しいのは、このためだってことですか？」


「そうです。あの厳しさは、この子たちに１日も早く自立してもらいたいという強い思いからなのです」


「…………」


「ここにいる子どもたちの親御さんの大半は、我が子に１日も早く自立してもらいたいと切望されています。それは、どうしても親は子どもよりも先に逝かなければならないからです。残された子どもの行く末を案じるが故に、子どもと一緒に無理心中を図る親御さんも実際、いらっしゃるのです。自分が元気な内は、いくらでも体を張って守ってやろうと思いますが、年をとっていく、病気をする、それは、どうにもならないことなのです」


「…………」


「社会全体もまだまだ障害者の受け入れが未熟だし、自立を擁護する機関も圧倒的に少ないですから」


校長先生は、憂うような遠い目で静かに言った。