部屋中にキリマンジェロの香りが充満した。


「うわぁ~いい香り」


「そうよ~豆から挽いてるんだから、本格的でしょ?うちの近くに珈琲豆の専門店があってね、そこで買って来るの。今の私の唯一の贅沢」

「どうぞ、召し上がれ」


出された珈琲を一口飲むと、静香は、幸せな気持ちになった。

「美味しい~お店で、飲んでるみたい」


「でしょ?先生方が陰で、この校長室のことを『喫茶・マリ』って呼んでるんですって。用務員の方が教えて下さったのよ」

「そうなんですか?」


「でもご心配なく、 お金はいただきませんから」