わたしとあなたのありのまま ‥3‥

全身が凍りついたように固まってしまって、ただただ、田所を見詰めていた。


そしたら、不意に田所の顔が近付いて来て、それは私の顔の横でピタリと静止する。身体がピクッと跳ね、お尻のすぐ後ろにある机が、カタッと小さな音を立てた。



「悪かったなぁ、彼女をろくに満足させてやれねぇ彼氏で」

耳元で田所が、冷たく小さく囁いた。



田所は身を起こして、もう一度じっと私を見下ろす。けれどすぐ、フイと顔を逸らし、その身を横へと滑らせ私と椅子の間から抜け出た。


静かに身を翻して背を向け、歩き出した田所。私を一度も振り返ることなく音楽室を後にした。



「ごめーん、ちょっと遅れちゃったー」

反省なんかちっともこめられていない謝罪を朗らかに口にし、音楽教師の浅野先生が田所と入れ違いに入って来た。



皆がそれぞれ自分の席に着く中、綾子は私の左隣に腰掛ける。