「いや、今の流れからいったら、どう考えても照くんじゃなくあんたに、でしょう」

綾子が正論で返すけれど。

『流れを読む』とかそんな高度な技術、この男が持ち合わせているはずがないのだよ、綾子くん。


案の定、田所は不思議そうにほんの少し小首を傾げる。けれどすぐ、「悪ぃね」なんて軽いお礼を口にしながら、四角いそれを受け取った。



「私たち、次、音楽だから。さっさとそれ持って帰って。照くんと食べてね?」

田所に追い払うようなことを言いつつ、その顔にはマリア様のような神々しい微笑が貼り付けられている。綾子、恐るべし。



「そっ。じゃ、照哉と食べるわ。あっ、思い出した、俺も音楽室に大事な用があるんだった。ほのかと一緒に行かねぇと……」


「何の用事だよ?」


とんでもなくわざとらしい猿芝居に、我慢できなくなって。

田所を見上げて尋ねた。