わたしとあなたのありのまま ‥3‥

「ごめん、はっきり覚えてます」

ボソボソと消えそうな声で呟いて、田所は苦笑した。

そして、気まずそうに目線だけを私から逸らす仕草が、まるで悪戯を見付かった幼い子どもみたいで、無性に可笑しくて思わず吹き出してしまった。


笑うな、と。ムスッと膨れた愛しい人。


「帰ろう、田所」

言ってニッと笑って見せ、その左腕に自分の右腕を絡ませた。


強引に腕を引かれ、渋々足を動かし始めた田所に、

「あーあ、モテ期終わっちゃった」

わざとらしく残念そうに言ってみる。


「一瞬の灯(ともしび)だったな」

意地悪く笑ってそんなことを言って、田所はこちらに視線を寄越した。


「誰のせいだと思ってんの?」

言い掛かりをつけて反撃。


「お前のせいだろ?」

けれどすぐ、予想外の言葉が返って来て驚く。


ポカンとして見詰めていたら、田所は更に続けた。

「お前が、俺しか見てねぇからだろ?」

田所はその目を艶やかに細める。


ドクン――

心臓が跳ねた気がした。


「だから一瞬でモテ期は過ぎ去って行った。さようなら、私のモテ期。短い間だったけど、夢のような時間だったわ」

低い鼻声が、女言葉でつらつらとしゃべる。