「今日、どうする?」

売店で買った爆弾オニギリを頬張りながら、綾子が私に問う。


「何が?」

そう聞き返して、私もお弁当の卵焼きを口へと放り込んだ。


「田所いないから、また一人で教室残る?」

「いやいやいや、綾子さん。ちょっと前までの私と今の私、一緒にしてもらっちゃ困るなぁ」

「ごめん、その違いがさっぱりわかんないんだけど。てか、どうでもいんだけど。結局、一緒に行くってこと?」

ボケを交えた私の発言は綺麗に流されてしまったから、「はい、一緒に行きます」と力なく頷いた。



中庭へ向かって、綾子と並んで歩く。

本日は雲一つない快晴。一年に一度あるかないかの中庭日和。と言うのは誇張表現。


ポカポカした秋の陽気に誘われて、今日は理系のやんちゃ軍団もこぞって中庭に来ていた。確かタバコを吸うのは照哉くんだけだったはずなのに。

でもその代わり、瀬那くんの姿が見当たらない。



「悠斗ならいないよ?」

すかさず声を掛けてくれたのは、やっぱり照哉くん。綾子から聞いてないの? とでも言わんばかりに、小首を傾げた不思議顔。


「うん、知ってる」

と返せば、ほんの一瞬考えているような素振りをした後、ハッと何かに気付いたように再び口を開いた。


「瀬那くんも今日はいないよ。悠斗が休みだから、テンションだだ落ち。自分の席で不貞寝してる」

その姿を思い出したのか、照哉くんはクツクツ笑い出した。