「田所、今日また休みだって」

お昼休み、綾子が携帯をコトリと机の上に置いてそう言った。さっきまでメールのやり取りをしていた相手は、どうやら照哉くんだったみたい。


「えっ?」

冬以とは何も無かったってこと、田所には直接会って伝えたかったのに、どうして……。

やっぱ昨日、田所に電話で報告すれば良かったかな。



「あの男、ズル休みばっかして、単位大丈夫なの?」

独り言のように綾子が呟く。


「そのぐらいの計算、いくら田所でも……」

そこまで言って、口籠る。


できないかも。死ぬほど単純で簡単な計算だけど、面倒くさがりの田所にはできないかも。


「もし足りなくなったら、補修でもなんでもしてくれるでしょ? うちの学校、案外そういうとこ甘いし」

根拠のない楽観主義な発言で、自分自身の不安を取っ払う。

田所は整備士の専門学校へ行くって言っていたから、卒業さえできればいいわけで。



ふっと、綾子が意味深な笑みを浮かべて私を見た。


「何?」

訳が分からなくて思わず尋ねれば、

「別に」

どうでも良さそうに返される。

気付けば、綾子の顔からさっきの微笑は跡形もなく消えていて、いつものクールで無愛想な綾子さん。