わたしとあなたのありのまま ‥3‥

「でも、嫌いにはなれないよ、ごめん」

『なんで?』

「だって、結果的に冬以は、私に『そういうこと』をしなかった。あの日の私だったら、確実にできてたはずじゃん。でも冬以はしなかった。冬以はそういう人だから……卑劣なことができない人だから……だから、嫌いになんかなれないよ」

『十分卑劣じゃん!』

冬以がまた、語調を強める。


『いかにも『ほのかと寝た』みたいに振舞って、ほのかが罪悪感で苦しめばいいって思った。そのせいで二人が駄目になればいいって思った。そしたらほのか、本当に俺のものになってくれるかもって』

何なの? その厨二病みたいな楽天的発想。稚拙過ぎでしょう。


「もしそうなったとしても……駄目になった原因の冬以に、私が縋るわけないじゃん」

きっぱりと否定した。冬以がこれ以上期待しないように。期待させちゃったのは私だけど。だから、これ以上期待させたらいけないんだ。


それもそっか、と。電話の向こう側の冬以が苦笑する。それは酷く悲しげで……。

だけど私の心は揺れない。今、揺れたらいけない。



「田所は、私が冬以とシてもシてなくても『俺の気持ちは変わらない』って言った」

そして止めを、刺す。


再びおとずれた沈黙。冬以が言葉を失っているのがわかった。