「でも、嫌いにはなれないよ、ごめん」
『なんで?』
「だって、結果的に冬以は、私に『そういうこと』をしなかった。あの日の私だったら、確実にできてたはずじゃん。でも冬以はしなかった。冬以はそういう人だから……卑劣なことができない人だから……だから、嫌いになんかなれないよ」
『十分卑劣じゃん!』
冬以がまた、語調を強める。
『いかにも『ほのかと寝た』みたいに振舞って、ほのかが罪悪感で苦しめばいいって思った。そのせいで二人が駄目になればいいって思った。そしたらほのか、本当に俺のものになってくれるかもって』
何なの? その厨二病みたいな楽天的発想。稚拙過ぎでしょう。
「もしそうなったとしても……駄目になった原因の冬以に、私が縋るわけないじゃん」
きっぱりと否定した。冬以がこれ以上期待しないように。期待させちゃったのは私だけど。だから、これ以上期待させたらいけないんだ。
それもそっか、と。電話の向こう側の冬以が苦笑する。それは酷く悲しげで……。
だけど私の心は揺れない。今、揺れたらいけない。
「田所は、私が冬以とシてもシてなくても『俺の気持ちは変わらない』って言った」
そして止めを、刺す。
再びおとずれた沈黙。冬以が言葉を失っているのがわかった。
『なんで?』
「だって、結果的に冬以は、私に『そういうこと』をしなかった。あの日の私だったら、確実にできてたはずじゃん。でも冬以はしなかった。冬以はそういう人だから……卑劣なことができない人だから……だから、嫌いになんかなれないよ」
『十分卑劣じゃん!』
冬以がまた、語調を強める。
『いかにも『ほのかと寝た』みたいに振舞って、ほのかが罪悪感で苦しめばいいって思った。そのせいで二人が駄目になればいいって思った。そしたらほのか、本当に俺のものになってくれるかもって』
何なの? その厨二病みたいな楽天的発想。稚拙過ぎでしょう。
「もしそうなったとしても……駄目になった原因の冬以に、私が縋るわけないじゃん」
きっぱりと否定した。冬以がこれ以上期待しないように。期待させちゃったのは私だけど。だから、これ以上期待させたらいけないんだ。
それもそっか、と。電話の向こう側の冬以が苦笑する。それは酷く悲しげで……。
だけど私の心は揺れない。今、揺れたらいけない。
「田所は、私が冬以とシてもシてなくても『俺の気持ちは変わらない』って言った」
そして止めを、刺す。
再びおとずれた沈黙。冬以が言葉を失っているのがわかった。



