わたしとあなたのありのまま ‥3‥

「言ってないけど、でもにおわせるようなことしたっていうか、そういう態度したじゃん!」

迂闊にも声が震えた。怒りや悔しさや残念さやショックや、とにかく色んな感情がごちゃ混ぜになって、私の心が震えていたんだと思う。


『だから? だから何? 嘘は吐いてない。だから騙してなんかない』

「そんな風に言えば、正当化できるとでも思ってんの? ふざけないでよ」

『正当化しようなんて思ってない。正当化なんかしたくない。ふざけてもいない』

「だったら、何?」



『ほのかが、俺のこと嫌いになればいい。

――――憎めばいい』


そう言った冬以の、何とも言えない悲痛な声に唖然とした。


冬以は私に嫌われるようなことを、わざと言っている。私に嫌われようとしている。

冬以の本心を悟ってしまったら、もう何も言い返せなくなった。言葉を発する気力は失っても、携帯は耳に密着させたままでいる。冬以と電話で繋がったままだ。


私の気持ちなんかお構いなしに、冬以がつらつらと話を続けた。


『あの日のこと、全部教えてやろうか? まずさ、ノンアル頼むふりして、ほのかにバレないように、店員にはカクテルを注文した。メニューのカクテルんとこ指差して『カシスオレンジ』って頼んだ。ほのかはお酒飲み慣れてないから、気付かないだろうって。現に全然疑ってなかっただろ?』