わたしとあなたのありのまま ‥3‥

「え? どういうこと?」

綾子が不思議そうに照哉くんを見上げて聞き返す。


「気ぃ利かせたんだよ」


「はっ?」


「だから俺らも……場所変えよ?」

愛しげに見下ろして、照也くんは綾子の肩を優しく抱き寄せた。



「不器用なヤツめ」

言って田所が、喉を鳴らしてクツクツ笑う。


お互いさまだろ、と。既に私たちに背を向けて綾子と歩き出した照哉くんは、振り向きざまそんな意味深な言葉を口にして、ニッと笑って見せた。



田所と二人っきり。

急に辺りが静まり返って、木の枝が風に揺れる音さえ気になりだす。


何か言わなくちゃ。私をしかと包んでいる田所の両腕を解いて振り返ろうとしたら、背後の田所が、その腕にぎゅうっと力を込めた。


「たどこ……」


「俺さ、」

耳元で囁かれた声の甘さに、身体が痺れるような錯覚を覚える。


「なに?」

背中に感じる心地よい温もりを失いたくない一心で、続きを促した。



「考えたんだけど――

俺やっぱ、お前のこと好きだから」


「うん」


「お前はこうして俺の腕の中にいるわけだし」


「うん」


「それでいんじゃねぇかな」


田所が自分自身に言い聞かせているような響きに、切なくなった。



「田所の気持ちは嬉しいけど、でも私……冬以にちゃんと確かめようって思ってる」


「好きにすれば?」


それは投げやりな感じじゃなくて、田所が本心から言ってくれているような温かみがあった。私がしたいようにすればいい、と。