そんな才能ある人(しかも超絶イケメン)が私のことを好きとか……。

きっと何かの間違いだ。冬以は今、熱病みたいなものに冒されていて、正常な判断能力を失っているだけだ。


目を覚まさせてあげないと、だし。



水曜日か、遠いなぁ。

明日もう一度、冬以に電話してみよう。もしかしたら折り返し電話があるかもしれないし、という薄っぺらい希望も捨てきれない。


それでも駄目なら、冬以の職場に突撃しよう。冬以にしてみたら、とんでもなく迷惑だろうけど仕方がない。






翌日、もやもやした気持ちのまま学校へ向かった。今日は、当然だけど田所のお迎えはなかった。


田所、学校には来るかなぁ。

未だにご機嫌斜めかなぁ……って、それは当たり前か。私昨日、ちゃんと事実確認もせず、無責任にあんなこと言っちゃって。



昼休みが待ち遠しいような、恐ろしいような、そんな複雑な心境で午前の授業を過ごした。


お弁当を食べている間もそわそわしっ放しで、綾子の話はほとんど耳に入って来なかった。「へぇ」とか「ふうん」とか、そんな相槌しかしていなかった気がする。


そろそろ本腰入れて綾子の話に耳を傾けないと、軽く締め上げられるかなって。一応そんな心配はしていたけど、頭の中がぼんやりしていて、それは危機感にまでは至らなかった。



「ねぇほのか。田所とどうなの?」

突然にそうふられて、頭をガツンと殴られたような錯覚に陥る。いや、実際に殴られたみたい。頭の天辺にじーんと鈍い痛みが……。


「痛い……」

痛むそこを両手で覆って机上に視線を落とし、ボソリと呟いた。