「ほのかっ」


名を呼ばれ振り返れば、声の主は立ち止まることなく教室内へと足を踏み入れた。

クラスメートの視線は一旦、彼に集中するものの、すぐに散る。


もうみんな、見慣れてしまったのだ。



ここは文系クラス。そこへ、二時限後とお昼の休み時間になると、大した用もないのに理系クラスの彼が欠かさずやって来るようになったのは、今から丁度三週間前。



最初は物珍しさから、皆が皆、興味津々で彼の一挙一動に注目していた。


けれど、こんなにも頻繁に目にするようになると、それが当たり前になって新鮮味がなくなると言うか――

非日常は日常になる。