「瀬那くん、本当にありがとう」

もう一度礼を口にして、さよならに代える。



「やめろって。そんな風に見詰められたら、やばっ、まじでチューしたくなる」


「ささ、お家に帰ろーねー?」


くだらない冗談はスルー。瀬那くんの身体を優しく押して、玄関から出してあげた。



やっぱりあの夜、冬以とは何もなかったんじゃないかな。

それはほぼ確信となって、私の志気を奮い立たせた。


確固たる証拠が欲しい。胸を張って田所に、『冬以とは何もなかったよ』って伝えたい。



すぐさま部屋に戻って携帯を手に取った。電話帳を開いて目的の名前を探す。


冬以に会って確かめよう。

もう二度と、田所にあんな顔をさせたくない。田所を悲しませたくない。失望させたくない。


そのためなら、冬以を傷つけたって構わない。酷いけど、最低だけど、心の底からそう思った。



だって私は――

田所を誰よりも……世界で一番愛しているんだから。