瀬那くんの言う通りだ。
こんなこと出来れば考えたくないけど、冬以と本当にシちゃったんだとしたら、その痕跡がどこかにあったはず。
でもどんなに懸命にあの時のことを思い返しても、そんなものは無かった……気がする。確信できないところが残念だけど。
多分、ゴミ箱の中に見覚えのないティッシュの塊は無かった。
多分、秘部に違和感は無かった。
だけど、どちらも『多分』なんだよな……。
頭の中であれこれ考えているうちに自宅に到着し、門の前で立ち止まる。
と、ここでようやく、瀬那くんの存在を思い出した。
ゆるゆると隣を見上げればバチリと目が合う。視線の先のその人は、ニッと屈託なく笑った。
なるほど……。女遊びを止めても、未だ女子たちのハートを鷲掴んで止まない魅惑の笑顔だ。
悔しいけど、そんな風に思った。
「着いた」
とりあえず、わかりきっている事実を口にすれば、
「だな」
と、短い同意が返って来た。
「ありがと……ね?」
「何が?」
「家まで送ってくれたことや……その……アドバイス……的な……」
意図的に濁した言葉を、しどろもどろ口にすれば、
「ああ、ミクロなアイツら?」
と、曖昧にした部分をわざわざ明瞭にして、瀬那くんは聞き返す。



