放課後、補修授業をサボる気満々の私は、さっさと帰り支度を済ませた。
「ほのかばっかズルいー!」
根拠も何もない言い掛かりをつけるナルちゃんの、両拳連打のポコポコ攻撃からなんとか逃げ延び、早々に教室を後にした。
門を出たところで不意に呼び止められた。
明らかに私を待ち伏せていただろうその人は、
「奇遇だね。ほのちんも補修サボり?」
と、白々しくそんなことを言ってニンと笑った。
完成されたカッコ良さが気に入らない。
多くの女子に、『瀬那くんにだったら遊ばれてもいい』と思わせてしまう、その端正な容姿と、無駄のないスタイリッシュさが鼻につく。
「やっぱ補修、受けてこよっと」
ボソリと小さく意思表明して、くるりと踵を返した。
「待てコラ」
すかさず手首を掴まれ、クイと遠慮がちに引き留められた。
躍起になって振り払うこともできたはず。
だけどそうしなかったのは、私の中のどこかに、瀬那くんを拒否していない自分がいたからだと思う。
「俺はほのちんの味方だって」
困ったような苦笑を浮かべ、柔らかい声音でそう言った瀬那くん。
私の中にポッと小さな安心感が生まれた。
みんなの前では毅然としていなきゃって、気を張っていたけど。
やっぱり辛い。心の奥底にあるわだかまりを誰かに聞いて欲しい。誰かを頼りたい。



