わたしとあなたのありのまま ‥3‥

何だよ、田所。


てっきり待ってくれていると思ったのに。きっと待ち焦がれていると思ったから、大急ぎで帰って来たのに。ちょっとだけ小走りだってしてやったのに、チキショー。



田所がもうここに居ないんだったら、私にだってここに居る理由がない。


トボトボと私も渡り廊下に向かって歩く。いつもそこから教室へ戻るから。




校舎内の廊下を俯きがちに歩いていると、

「おっ、秋山じゃん。何? 今日は一人?」

男子生徒が擦れ違いざま、ご機嫌なテンションで声を掛けて来た。



立ち止まって振り返れば、同じクラスの『クチビル』くん。もちろんそんな名前じゃないけど。唇がやけにぶっといから、みんなそう呼んでいる。


本人は「セクシーだろ?」なんて。凄く得意気だから、どうやら気に入っているっぽい。



その幸せプラス思考、ほんの少しでいいから私にも分けて欲しい。