そろそろ昼休みも終わる頃だ。

身体は起こさず顔だけを横向けて、スマホで時間チェック。



あと5分か……早く終われ。

現国の授業がこんなにも待ち遠しいのは、生まれて初めてだった。



と、何やら教室内がざわめきだした。

どうせ男子がふざけて、アホなことやってんでしょって気にも留めなかったんだけど……。


右肩をつんつんと遠慮がちにつつかれ、反射的に顔を上げて振り返れば、机のすぐ横に男子の制服。


恐る恐る見上げると、無造作に遊ばせたミルクティー色の髪と、無邪気に微笑む美麗な顔が視界に入った。

くりんとした二重の目が幼さを醸し出すも、バランス良く並べられた目鼻口は、男の色気を惜しみなく大放出。そして、髪の色に負けないぐらい甘い。



「瀬那くん……どうしてここに?」


「デッカイ避妊具、被りにきた」

言って瀬那くんは、ニッと両口角を上げて見せた。



「あんなの冗談に決まってんじゃん」


「知ってる」


平然とそう返し、「あのさーほのちん……」と続けたところで、


「せーなーくーん!」

黄色い声が聞こえ、瀬那くんと二人してそちらに視線をやれば、トイレかどこかから教室に戻って来たらしいナルちゃんが、こっちに向かって猪突猛進。