「用件は何ですか? 愛の告白だったら、謹んでお断りします」


『やだなぁ、ほのちん。一発ヤらせてなんて、思ってても言わねぇよ』


そんなことミジンコも思ってないくせに。



シモい冗談は当然のようにスルーして、

「じゃあ何? 私忙しいんだけど」

大嘘を平然と口にする。



『悠斗にちらっと聞いたけどさ、ほのちん――

――――浮気したんだって?』


「信じらんない! 田所、そんなことまで話したの?」


『ごめん、ホントはなんも聞いてない』


「はっ?」


激しく取り乱して、うっかり自爆。ちっきしょぉ……。


この怒りの矛先は、もちろん瀬那くんへ。当然でしょう? シレっと嘘吐いて鎌かけたんだから。



「ごめんじゃ済まない。瀬那くんのバカちんこ! 全身生殖器!」


『ちょっ、それ、『全身わいせつ物』よりヒドっ』


「今度会ったらデッカイ避妊具被せてやる! 窒息してしまえ!」


『ほっ……ほのちん? ちょっと落ちつ……』


ぶちっと、親指に闘魂籠めてオンフックボタンを押した。



もうやだぁ……。何なの? みんな何なの?

私たちの深刻な危機を、面白がってんの? そうとしか思えない。



机の上に両腕を組み、その中に顔を埋めてぎゅっと目を瞑る。

それでも悶々とする気持ちが抑えきれず、顔は伏せたまま、足をジタバタさせて地団太を踏んだ。