それでも学校へ行った私は、本当にエラいと思う。
田所の分まで頑張らないと、なんて。意味不明な使命感に無理矢理火を点け、折れそうな心を奮い立たせた。
だけど教室に辿り着いたら、なんだか酷い倦怠感に襲われた。自分の席に直行し、腰を下ろすなり机の上に突っ伏した。
ぐうっと両腕を前に伸ばして、顔は横向けて。胸から上を机上に密着させれば、その表面は案外冷たくて、心までがひんやりした。
「おっはぁー」
ポンと後頭部をはたかれて、ゆるり、頭を少し持ち上げ反対方向を見上げる。いつもと変わらない綾子がそこにいて、爽やかな微笑が私を見下ろしていた。
綾子がいつもと変わらないのは当たり前で。なのにすごく羨ましくて、泣きたくなった。
「どうだった? 嵯峨崎先生(冬以)とのデート」
いきなり核心を突いた質問に、全身が硬直した。ピキピキと顔面の筋肉が軋む。
「あれ? 地雷だった?」
言いながらも、綾子は悪戯っぽく笑う。
ゆるゆると重い上半身を起こして、
「別に地雷じゃないですよ。フツーに楽しかったです」
引き攣った笑顔と共に白々しく答えた。