「『私だって』、何?」

続きを促す田所の声は、とても冷ややかだった。



「何でもない、ごめん。田所、ほんとにごめん」

縋る想いで、ただただ謝れば、

「もういいって」

田所はそう言いながらも、繋いでいた手をスルリと解く。



「で?」

田所にそう聞かれ、何を答えたらいいかわからず、

「『で?』って?」

と聞き返した。



「お前はどうしたいの?」


「そんなの決まってんじゃん。田所とこれからも一緒にいたい」


「俺も。じゃ、あいつとちゃんと別れて来いな?」


言って、くるりと身を翻し、来た道を引き返し始める。



「ちょっと待って! どこ行くの? てか、冬以と別れるも何も……」

慌てて後を追いながら叫べば、田所はヒタと立ち止まる。



ゆっくり振り返った田所、私が追い付いて隣に並ぶのを待ってから、

「じゃあ何? お前はこれからも、二股で行くつもり?」

至極冷淡な口調でボソリと呟く。



「どうしてそうなんの? 違うんだって、全部話すから……」


「いい、話さなくて」

言って、再び歩き始めた田所。すかさず腕を掴んで引き留めた。



「どうして? お願い、聞いてよ田所」


「彼女が他の男とヤッた話なんか聞きたい訳ねーだろ?」