「嘘、冗談だって。田所には俺からちゃんと話しとくから」

今度は本当に申し訳なさ気に、柔らかい声音で言った。



「いい、自分で言う。私以外から聞いたら、田所、余計に気分悪いだろうし」


「相変わらずお前……」


言って、どこか寂しげな、どこか懐かしげな……。何とも表現しがたい複雑な笑みを山田は浮かべた。



結局、その続きは聞けなかった。

私が相変わらず何だって言うんだ。



でもそれより何より、困った、どうしよう。



何だかんだと言いながらも、冬以は気持ちよーく一曲踊り終え、すぐさまペコリとお辞儀して颯爽と舞台を降りた。



そして、

「後で連絡する」

と。観客の中に埋もれている私に向かってだと思うけど、眩いほどの素敵笑顔でそう言い残し、まるで風のように体育館から消え去った。



思いっ切り跡を濁していったな、立つ鳥め。



ちょっとは――

――残される私の身にもなって欲しかった。