「…そう。ありがと」 “根は真面目”っていう言い方に、彼の正直さを感じた。 よく出来すぎた人。本当に。 『…じゃあ、センパイ。僕そろそろ戻りますね。次、体育だし』 「ん。それじゃ」 『ありがとうございました』 彼が去ってから、あたしは思う。 ―彼はなぜ、あたしのことだけ“センパイ”と呼ぶのだろう。 他の3年生には、〇〇先輩とか、苗字も呼んでいるのに。 あたしの、“野坂”という苗字は、呼ばない。 まぁ、あたしだって 彼の、“砂原”という苗字は、呼ばないのだけれど。