暫く歩いて静寂の森に到着する。
イブナクは適当にそのへんの木の枝で円を書くと、円の中に入るように、ライアスとドリウスに言った。
イブナク自身も円の中に入る。

「これで本当に転移できるのか?」
ライアスが疑わしげな視線をイブナクに向ける。
「大丈夫だ、問題ない。」
これで何度も魔界に行ってるからな、とイブナクが補足する。

イブナクは木漏れ日にカードを当てると一言だけカードの発動に必要と思しき言葉を言う。
「エビリアンズゲート!」
木の枝で描かれた円から真っ白な光が立ち上り、視界が真っ白になる。
ライアスとドリウスは、あまりの眩しさに目を閉じる。

「着いた。」
イブナクの声が聞こえる。
ライアスとドリウスはおそるおそる目を開ける。
「あ…。あの樹の…。」
間違いなく陰鬱の森だった。
陰鬱の森の例の大樹は相変わらず悪魔達を捕らえていた。
ライアスには、大樹が悪魔たちの力と意識を奪っている様子が視えた。

前はそんなもん視えなかったから、アーヤと契約したことで力がついたのかな、と思う。

「ここから歩くのは悪魔といえどあぶねぇんだ。」
ドリウスはそう言うとイブナクをお姫様抱っこした。
「そうだな、アフストイと合流しなきゃ。」
「おい、お姫様抱っこはしなくても…!」
「何を慌ててるんだイブナク?」
ライアスは何故イブナクが慌てているのかわからない。

ドリウスはイブナクから苦情が出てもお姫様抱っこを解除するつもりはないようだ。
ドリウスは龍のような翼を広げ、ライアスは黒と白の鳥のような翼を広げる。
そのままふわりと浮き上がり、傲慢のサキマの屋敷まで飛んでいった。