それぞれが用意を整えて静寂の森に向かう途中、
「僕は、悪魔狩りの長に挨拶してこなきゃいけないから。」
悪魔狩りの詰所の前でライアスとドリウスは待たされる。

イブナクだけが詰所に入っていった。
イブナクは長の部屋にノックしてから入る。
「長、今から行ってまいります。」
「そうか。」
長はだいぶ憔悴しきった様子でイブナクにそう答えた。
「ちゃんと、この村に戻ってくるんだぞ。」
「…はい。」
両親がいなかったイブナクやサウラーを引き取り、一流の悪魔狩りに育て上げてくれたのは悪魔狩りの長だった。
育ての父と違う世界へ旅立つのは。
年齢の割に落ち着いているイブナクでも寂しさを感じた。
「あの小娘と。」
長は突然話題を変えた。
「祝言をあげるなら村に帰ってきてからにしろ。」
「長っ!?」
「わからいでか。」
イブナクは顔を耳まで真っ赤にし、長はドヤ顔である。
「それでは行ってきます。ちゃんと…帰ってきますから…。」

イブナクと長が話している頃。
「ライアス。」
ドリウスが話しかける。
「なんだ?」
ライアスが短く答える。
「イブナクのことなんだが、アフストイはイブナクを気に入らないかもしれないな。」
「え。なんで?」
それはイブナクがライアスに好意を寄せているからなのだが、ドリウスには、そのことをわざわざライアスに伝えてやる必要性はなかったので適当にぼかした。
「さぁな。だが、アフストイがライアスを探しに人間界に来たがったのは事実だ。」
「そんなことしたら中級悪魔だけが留守番になって、居留守使ってる傲慢のサキマに力を奪われるか殺されちゃうかのどっちかになっちゃうだろ…。」
「だから俺が来てやった。」
ドリウスはドヤ顔である。
「そりゃどーも。」

会話が終わった頃、イブナクが詰所から出てきた。
「待たせたな。行こう。」

3人は静寂の森へ向かって歩き出した。