ライアスの着替えが終わる頃にやっとイブナクが起きた。
「よういかちい兄ちゃん、やっと起きたか。」
「え、うん。あぁ…。」
要領を得ない返事に、体と意識は起きていても思考力がはっきりしていないことがよくわかる。
「すげー…ライアスより寝起き悪い奴初めて見た。」
ドリウスが呆気に取られている。
「とりあえずこの縄は斬っちまうぞ。」
ドリウスが爪を伸ばし、縄を真っ二つに切断した。

「ちょっと待てw縄のアクセサリーとか趣味じゃないぞ!」
あまりにも雑な対処にライアスは面倒くさそうにドリウスに苦情を言う。
「そんなもん魔界に着いてからアフストイが綺麗にしてくれるだろ。」
ドリウスはイブナクの体をガクガクと揺さぶる。
「おい、いかちい兄ちゃん、いい加減起きろし。」
「起きてるんだけど、着替えるからライアスこっち見ないでくれる?」
どうやらライアスに着替えを見られたくないらしい。
ライアスはめんどくせぇやつ、とぼやきながらイブナクに背を向ける。

「もういい。」
イブナクから声をかけられ、振り返る。
イブナクは黒地に緑の縁取りのついた服に、背中には霊銀の剣を2本担いでいる。
防御力はあまり期待できそうにないが、天界の加護を受けているらしく、ライアスとは正反対の力を感じた。
同じ事を、ドリウスも考えたのか、
「天界の加護を受けた服なのに、黒なのな。」
イブナクはなんでもないことのように答える。
「だって…黒のほうが返り血が目立たないから…。」
「な…なるほど。」
イブナクが悪魔を相手に実戦をしてきた人間だということを改めて再認識させられる答えだった。