イブナクは城から帰ってきたことを悪魔狩りの長に報告する。
会話の内容までは報告できない。
ライアスはイブナクの監視対象だから報告に同行せざるを得なかった。

ドリウスは人間界は初めてではないのか、旅人の風情で村人に溶け込んでいた。

長はこれ以上面倒を起こされては困るとばかりにイブナクに縄を渡した。
「人間は眠らなければならん。」
と言いながら渡された縄は、眠っている間はライアスを縛っておけ。という無言の命令であった。

ドリウスも人間界に迷い込んだ当初のライアスと同様に人間界の空の蒼さに目を細める。
草木は緑に色づき、ところどころ花が植えてある。
ドリウスは早々に宿に行き、まったりだらだらとし始めた。
まさか強欲のアーヤと再会することになるとは思っていなかった。

ユーギットの魅了が効きづらかったのもアーヤと血の契約をしていたおかげだろう。
しかしアーヤが魔界に攻めこんできたら、ライアスが神の座を射止める確率は低くなる。

独りになったドリウスは今後のアーヤの動向は把握する必要があると判断し、水鏡の魔法を使う。
見えるのは姿だけで、アーヤの思念は読み取れなかった。

アーヤの思考までは読み取れなかったので、魔界に残っているはずのアフストイに念話を送ってみる。
『ライアス、確保。強欲と血の契約を成立。』
念話が届くかどうか、ドリウスは自信がなかったが、試してみた。
『聞こえてるよ、ドリウス。そっかぁ、好戦的な強欲の君と血の契約で済んだんだ。いつ帰ってこれるの?』
『来週。人間界でゲートの転移魔法はうまく使えないらしい。』
『それまでに傲慢のサキマが出てくるといいけどね…。』
それきりアフストイからの念話は途切れた。