その後、アーヤが多少ライアスを気遣ったのか、休憩を兼ねてティータイムもどきを開始した。
ライアスとアーヤは紅茶にミルクと砂糖をたっぷり入れて飲み、ドリウスとイブナクはストレートで飲んだ。
スコーンという焼き菓子もおいしくいただく。

午後の優雅なティータイムを演出しながらも、アーヤはイブナクに向き直る。
「イブナク、その目でしっかり、血の契約を見ただろう。民衆の間で流れておる噂は事実だ。」
イブナクは、答える。
「それでも…陛下は、陛下ですから。今のこの国に、無くてはならないおかたですから。」
「そなたたちから見たら善政をおこなっているように見えても俺は単に強欲なだけでね。」
アーヤは続ける。
「余の国は余のモノ、余の国の民衆は余のモノ、余の国の財も余のモノ、余が征服した国の全ては余のモノ。」
アーヤは悪魔的な表情を浮かべ、イブナクに言った。

「余は誰であれ、余が手に入れたモノに傷つける奴は許さない。人間に害を為すのは大半が悪魔達だ。だから悪魔狩りの組織を作った。」
イブナクは絶句する。
「軽蔑してくれていい。余は善良な王ではない。そもそも悪魔と人間ではここの考え方からして違うからな。」
アーヤはつやのある銀髪の生えた頭を指さす。

「さて、大義であったな。ライアス、イブナク。ついでにドリウス。」
「ついでなんすか。」
ドリウスはニヤニヤ笑いでアーヤの言葉に答える。
「もう帰って構わんぞ。あぁ、そうだ…。ドリウス。」
アーヤはドリウスのほうを向く。
「おそらく陰鬱の森から転移してきたのだろうが、人間界の静寂の森から転移するのは不可能だ。ドリウスも天界のカードを使ったほうがよかろう。」
人間界から異世界へ転移するためには天界の転移カードが必要らしい。
「来週には麓の村に届くことになっておる。ドリウスは人間界には慣れてるようだから悪魔だとばれることもなかろう。普通に宿にでも泊まるといい。」
アーヤは右手を水平に構える。転移させられるのだ。
「ではまたな。」
アーヤの右手が左に水平に振られる。
3人は悪魔狩りの詰所の前に立っていた。