「じゃ、とっととやっちまうか。」
ライアスはそう言うと自分の手のひらを傷つけた。アーヤも片方の手を傷つける。
2人の手にぷっくりと血の玉が浮かび上がる。

アーヤはライアスと血の契約をするつもりだ。

自らを傷つけるという行為の理由がわからないイブナクはただただ驚愕の表情で3人を見ている。
アーヤとライアスは傷つけた手のひらを重ねあわせる。

イブナクは、はっきりとその目で見てしまった。
手を重ねあわせたアーヤとライアスの間で淡い闇が交錯する瞬間を。

「ぐっ…。」
ライアスは少し苦しげだが、立ち続けている。
ドリウスはニヤニヤした表情ではなく、珍しく真剣な表情で2人の様子を見守っている。
「ドリウスは耐えたぞ。」
ぼそりとアーヤが言う。
「え…。」
「ドリウスとの血の契約は済んでおる。ドリウスが下級悪魔だった頃の…随分前の話だが。」
それを言われるとへたり込むわけにはいかない。契約者のドリウスの前や、七罪の前で情けない姿は見せたくなかった。

アーヤはSなのか、重ねあわせた手に指を絡ませ、離れないようにしっかりと握り締めている。
流れこんでくる強力な魔力の圧力に屈しそうになるが、ライアスは必死で耐える。

5分ほどそうしていただろうか。

アーヤが手を離した。ライアスは少しよろけた後、倒れそうになった。
それをドリウスが受け止める。