「む。」
アーヤは何かを感じ取ったようだった。
ライアスとイブナクはアーヤが何を感じ取ったのかはわからない。

アーヤは指をパチンと鳴らし、先ほどの女を呼ぶ。
「紅茶を4つ。スコーンを4人分、ここに運び給え。」
女は一礼して去っていく。

その直後。

闇が凝ったようなボールが現れ、人型をした何かが吐き出されてきた。
「ドリウス!!」
「あの時の白髪の…!」
「招いた覚えはないが、ドリウスではないか。」
アーヤは特に気を悪くした様子もなく、ドリウスを見下ろす。

「あ、どーも。ライアス…とこないだの悪魔狩りか…。」
「イブナクだ。」
「ドリウス、余を覚えていないか?」
「え…?ええぇぇええええーーーーーー??」
ドリウスは絶叫する。
「強欲の…アーヤ…様…。」
ライアスがうっかり人間界に転移してしまったことはわかっていたことだが、そこで、強欲のアーヤと出会っていたとは全くの想定外であった。

「さて、ライアス。招いていないが、ドリウス。今の魔界の状況を教えてもらおうか。」
イブナクはこの3人の話の真相を全く知らないのだが、もしかしてアーヤ陛下は魔界に攻めこむつもりか?といった程度の予想だった。
「どこから話せばいいんだろう。」
ライアスがぽつりと漏らす。
「俺怠け者だったからあまり世間の情勢を把握してなかったから…。」
「じゃあ、僭越ながらオレから説明するか。」

魔界の神ルファンが死去したこと。
上級悪魔から下級悪魔まで、志ある者は魔界の神を目指し、血で血を洗う闘争を行っていること。
魔力を得た後に七罪を従えるか、交渉を用いて七罪と契約するかの混沌とした時代になっていることをドリウスが順序良く説明する。

「ライアスもドリウスも中級悪魔であるな。ドリウスもちょっと前までは下級悪魔だったわけだが。」
アーヤはライアス達の状況も把握した。
「下級悪魔が簡単に中級悪魔になるには七罪との血の契約が手っ取り早いということだな。」

庭園のベルが鳴らされた。
アーヤは指を鳴らし、ベルを鳴らした相手に入ってくるように促す。
紅茶が4つとスコーンが4人分運ばれてきた。
女は人数が増えているのに全く気にもしていない。突然人数が増えていることなど日常茶飯事なのだろう。

「と、言うことは、ライアスの狙いは血の契約か。余は構わんぞ。」
アーヤが横柄な態度でそう言う。