人間の女についていくと、庭園のような場所に着いた。
銀髪碧眼の絶世の美少女がいる。間違いなく、昨夜ライアスと会話した少女だった。

アーヤは片手を上げると、案内してきた女を下がらせた。

「会いに来たぞ。」
「ちょ、陛下にその口の聞き方は…!」
イブナクが慌てるが、アーヤは鷹揚にうなずき、
「よいよい、そなたも緊張するでない、イブナク。」
アーヤの機嫌は良さそうだ。

「イブナクよ。昨夜は監視対象のこの娘を逃してしまったようだな。」
国王直々に言葉をかけられ、しかもそれはイブナクの失態の話なので、イブナクは跪き、縮こまっている。

「おもてを上げい。イブナクほどの堅物が何故監視の目を解いてしまったのかは問うまい。」
問わないと言いながらも、アーヤにはだいたい推測がついているようだ。
人間界に長く居ると人間の心を多少は理解できるようになったのも理由ではある。考えることが違うのだから共感はできないが。

「だが、その失態、礼を言うぞ。イブナク。」
イブナクは訳がわからないといった表情をしている。
「イブナク。余はライアスと話がある。席を外してはくれまいか。」
少女王に席を外すように言われたが、イブナクはライアスを監視しなければいけない立場なのだ。
イブナクの表情に戸惑いが浮かぶ。迷いが見えるイブナクに対し、アーヤは更に言葉をかけた。
「悪魔狩りの長の命もあるか。ではここで余とライアスが話す内容は他言無用に願おうか。もし話した場合、首が飛ぶぞ。」
イブナクは、とりあえずライアスの監視を続けられるようだが、聞いてはいけない会談のような気もした。
イブナクは腹を括り、その場に残ることを選んだ。