「お、戻ったか。」
意外と早く戻ったアフストイに対していつもの胡散臭いニヤニヤした表情から明るい表情に変わるドリウス。
ドリウスのこんな顔も珍しいんじゃなかろうか、と思いつつもアフストイは記憶の共有をすべく無言でドリウスの頭を鷲掴みにする。
「うわ、何すんだ、うわあああーーーーー…あ?」
ドリウスの頭の中に人間界へのゲートを開く魔法の使い方や構築方法が流れこんでくる。
オマケにアフストイがどうやってこの知識を得たのかの情報も流れこんできた。
ノアはドリウスが思っていたことと全く同じことをわざわざ言ってくれたらしい。とんでもない世話焼き上級悪魔である。

「じゃあこれでいいかな?私ライアスを探しに行っていい?」
アフストイは今にもゲートの転移魔法を使いそうだ。
「七罪の屋敷に中級悪魔を置いていくのか?それやられると傲慢の餌になってオワコンになる未来しか視えないんだが。」
「そんなのは知らない。ドリウス君は私の契約者じゃないもの。」
アフストイは子供のような理屈を展開する。
「アンタの契約者じゃないけど、ライアスの契約者なんだよな。」
「あれ、脅してる?」
いい度胸だ、と言わんばかりの顔でアフストイがドリウスを睨む。
「餌になる未来が見えてるのに、見捨てて人間界に行ったらライアスは多少呆れるだろうな~。」
「うぅ…。」
アフストイはぐぅの音も出ない。

「ってわけで行くか。傲慢が出てきたら念話で教えてくれ。人間界まで伝わるかはわかんないけど。」
ドリウスはそのままゲートの転移魔法を発動する。
部屋にはアフストイだけが残った。
「何なのよもうっ!!」
アフストイは男だがヒステリックに叫ぶとドリウスがいた場所に枕を投げつけた。



その様子を水鏡で見ていた傲慢のサキマはアフストイ達を鼻で嗤った。
「なーにやってんだか。」
しかし、留守番として残すには適役を残したと言える。
傲慢のサキマとはいえ、嫉妬のアフストイには簡単には手出しができない。
残るのがドリウスだったら殺すなり、体の一部を奪うなりして力の糧にできたのに、と珊瑚色の唇を噛み締める。
サキマの居留守ごっこはまだまだ続くようだった。