「で、またここに以下略」
ノアが呆れた顔で城の調理場に突然現れたアフストイを見る。
ノアは菓子を食べていた時間を邪魔されて不機嫌そうだ。
「小娘と血の契約をしたのだろう?」
「そりゃ、しましたよっ!でも人間界には悪魔狩りの奴らもいて…。」
ノアは盛大にため息をつく。
「嫉妬の。貴殿は小娘を、嫉妬のの利益になると判断して血の契約をしたはずだ。」
相変わらずノアの言葉は重い。
「そうですけど…。」
アフストイは少し身を縮める。
「契約の相手の身を案じるなど、自分自身の判断が誤っていたと認めるようなものだ。」
アフストイは不満そうな表情をしている。
ノアは言葉で止めても無駄だと悟った。

「嫉妬の。人間界への転移はオレも詳しくない。ユーギットくらいしか詳しい奴はいないぞ。」
「色欲の…ユーギット殿ですか…。」
「手近な男か女を手土産に持っていけば身の安全は確保されるだろう。できれば見目の良い者がいいな。」
ノアはアフストイを早々に追い払いたいがために助言をした。
「恩に着ます。」
アフストイは城の調理場を出る。

丁度目の前に美人で、姿形の良い女悪魔がいた。
城の使用人である様子ではない。通りすがり…のようだ。

「ねぇ君君君、私と契約しない?!」
「え…?」
「私は嫉妬のアフストイ。君にちょっとお願いがあるんだけど。」
「嫉妬の…アフストイ様…?」
女悪魔の目の色が変わる。
「私のお願いを聞いてくれたら君のお願いも、叶えられるものなら叶えてあげるよ。」
「私はサキと申します、アフストイ様。」
「サキちゃんか…傲慢のサキマ殿と名前が似てるね。」
サキは曖昧な微笑を浮かべる。
「アフストイ様のお願いと申しますのは?」
「まずは何も言わずについてきてほしい。」
アフストイはサキを連れ、色欲のユーギットの屋敷に向かった。