その頃、魔界。

傲慢のサキマの屋敷でドリウスとアフストイはライアスが帰らないことに不安を感じ始めていた。
「ライアスちゃん…どこに行っちゃったんだろう…。」
「そのうち帰ってくるっしょ。」

ドリウスはライアスが飛びだった場所に立つ。月が見えた。
「3つの月、微妙にずれてね?」
「あっ…!」
アフストイも気づく。
「ライアスちゃんがいなくなったのは昨日、月が出てた時間だから……。」
「人間界行ったなこれ。」
ドリウスはこんなときでもニヤニヤした表情を崩さずに呑気な様子だ。
「昨日は3つの月が重なってたんだ…。」
アフストイは居ても立ってもいられない様子だ。
「ノア殿のところに行ってくるっ!」
「おいおい、中級悪魔1人この屋敷に置いていくつもりかよ。」
ドリウスの質問にアフストイが詰まる。
「嫉妬のがいるから厚遇されてるようなもんだぞこれ。」
「でも!人間界には悪魔狩りみたいな危ないのもいるのよ!?」
「男なら黙って待つ。」

「でも!」
アフストイは動かないと気が済まないようだ。
こいつ言葉で止めても無理だな…。とドリウスは判断した。
「転移に詳しそうなのはノアさんか色欲のだ。」
ドリウスはアフストイに語る。
「そこに行ってゲートの転移魔法の使い方を聞いてくるんしかない。」

しかしドリウスもただで行かせる気はなかった。何しろ、傲慢の屋敷に中級悪魔が1人いるというのはドリウス自身の命に関わりかねない。
だから、アフストイに2つほど制約をつけることにした。
「まず人間達の時間で3時間以内に聞いて戻ってくること、それができるんならここで留守番しててやんよ。」
「ドリウス君に命令されるいわれはないけどね。まぁ善処してあげる。」
アフストイはすぐに転移した。
ドリウスはニヤニヤした表情は崩さず、独り言を吐く。
「ま、オレはライアスを信用してるからな。」
血の契約をした悪魔同士、互いが互いを心配する必要はない。
ドリウスはライアスは自分の利益になると認めて血の契約をしたわけなのだ。
そのライアスを疑うなど、自分自身の判断を疑うにも等しい愚考なのであった。