ライアスは詰所の外で翼をしまって芝生の上に体育座りをしてぼけっとしていた。
こんなに綺麗な蒼い空をライアスは見たことがなかった。人間界も悪くない。
そこにイブナクが近づいてくる気配がしたが、特に気にもしなかった。

「おい…。」
イブナクが疲れた様子でライアスに話しかける。
「おとなしくしててくれればよかったのに…。」
「あーあーあー俺が悪かったってば。」
面倒くさそうな説教になりそうだったのでライアスは聞き流す…が、言われっぱなしも気に入らないのでちょっとだけ反論した。

「そう怒るなよ。一緒に寝てたら俺が起きたのに気づいたかもしれないだろ。勝手に床で寝てたのはイブナクだろ。」
「う…。」
イブナクは顔を赤くする。
「これでもっ!」
イブナクは顔を赤くしながらも怒っている。器用なやつだ、とライアスは思った。

さっきまで怒声を発していたイブナクの声が少し、小さくなる。
「心配した。僕が監視についた理由は君が悪さしないか監視するためだけじゃない。」
「どういうことだ?俺はこれでも中級悪魔だぞ。心配されるいわれはないんだが。」
「悪魔狩りには過激派もいる。中級悪魔程度じゃ、数で押し切られて負ける。僕たちは天界の加護を受けた武器を使ってるから。」
ライアスとしてはライアス自身の力を過小評価されたようで面白くなかったが、悪魔狩りの専門家が言うのならばそうなのであろう。

「だから。」
イブナクはライアスを抱きしめた。ひどい締め付けようである。
「生きててよかった…。」
「ぐるぢぃ、痛い痛いっ!!離せ、離せっ!!!」
「あ、ごめ…。」
イブナクが顔を赤くしてライアスから腕を離し、目を逸らす。
「なんのお仕置きだよ…。あぁ、ひでぇ目に遭った。」
ライアスはイブナクの様子には全く気づかず、ぼやく。
イブナク自身、自分が無意識で取ってしまった行動に疑問を覚えつつも、ライアスを連れて、ちゃんと歩いて馬車が到着する予定の場所に向かうことにした。