「長。」
イブナクは疲れた様子の長に話しかける。
「長だって、知っているでしょう。アーヤ陛下の公然の秘密を…。」
民衆の間で囁かれている、アーヤ陛下の公然の秘密。

「アーヤ陛下は悪魔だという噂だろう。
当然だが、長も知っている。

「だが、国は豊かに潤い、飢える者もアーヤ陛下以前よりは減った。」
長は淡々と事実を述べる。
「戦争が多いことに不満を持つ者もいるが、必ず勝って新たな領土を拡大し、新たな資源を得てくる。」
長は事実のみをつらつらと言い連ねる。
「正体が悪魔だと言うのなら、その意図はわからん、わからんが、善政を行う王であれば誰でもいいのだよ。我々民衆にとってはな。」
「そう…ですか。」
イブナクはそう言い、長の部屋を後にした。
鉄砲玉のような悪魔の小娘…ライアス…が何をやらかすかイブナクにはわからなかった。
悪魔が考えることは、ただの人間には永遠にわからないのかもしれない。