「教えるのはいいけど、俺もタダで教える気はないぞ。」
ライアスは暗に血の契約を匂わせる。
「ふむ…、ライアスにもライアスの考えがあるようだ。そろそろサンライトが水平線から見えてくる頃だ。続きは明日聞かせてもらうとするか。」
アーヤはそう言うと、突然書類が置いてある机に向かい、羽ペンを取って紙に何かを書き始めた。
「なんだそれ…。」
「明日城へ堂々と入れるように手配した書状だ。絶対に開封するなよ。」
アーヤは右手につけていた指輪を外す。
その後、書いた紙を封筒に入れ蝋燭の蝋を少量垂らし、指輪を押し付け、ライアスに封筒を渡した。

「そういえば麓の村から迷い悪魔を監視中の報が届いていたな、ライアス、そなたが迷い悪魔か?」
「ぶっちゃけそのとおりなんだけど、王様は耳が早いんだな。」
「この国は多少の魔法は普及しているぞ。水鏡程度の連絡手段ならな。」
それも人間と悪魔の混血児を魔界から連れてきた結果だがな、とアーヤはライアスに言うわけでもない様子でつぶやく。

「では明日麓の村に馬車を向かわせよう。監視者はイブナクか。あの堅物の監視をどうかいくぐってここまで来たのやら。それも明日聞かせてもらうことにするか。」
アーヤは右腕を横に水平に伸ばす。
「またな。」
アーヤは水平に伸ばした右腕を左側に振りぬく。
アーヤのその言葉を最後に、ライアスはイブナクの家の玄関の前に転移させられていた。

ライアスはまたそっとイブナクの家に入る。
ところが、イブナクはいなかった。