「あ、昼間の!」
ライアスの姿を見て、1人の男が声をあげる。
「あ、えぇと…ファス…だっけ?」
「うん。覚えててくれたんだ?…堅物のイブナクに監視されてるんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、イブナク寝てたし、俺は目が覚めたからちょっと夜の散歩。」
「奢るから飲んでいけば?あ…まだお酒飲ませちゃマズイトシかな?」
ファスが困ったような顔をする。

「ファス、ミルクくらい用意してあるわよ。」
昼間、カミュと名乗った女がファスとライアスに声をかける。
「カミュさんミルク頼むよ。」
ファスがミルクを頼む。

「ああ、そういえば名乗ってなかった。俺はライアス。しばらくこの村にいるからよろしくな。」
「迷い悪魔か。この村、結構多いんだよね。その度に悪魔狩りが状況を判断して倒すか、なんとかして魔界に帰すかしてるよ。」
「はい、ミルクよ。」
カミュがミルクを運んでくる。
「ミルク…。」
白い飲み物だった。ライアスは恐る恐る口をつけてみる。
「甘い…。美味い…。」
「そいつぁよかった!」
ファスもカミュも嬉しそうだ。

「夜の散歩ってどこに行くの?」
カミュがライアスに訊く。
「ふらふらーっと東へ行ってみたいんだけど。」
「東には何も無いけど…。散歩は散歩でも夜空の散歩なのかな?」
「うん。」
ライアスは酒場のステージに上がり、翼を広げた。
「片方ずつで翼の色が違うの珍しいかも。でも白と黒の対比が綺麗ね。」
カミュが言う。
「東はこの酒場を出てから、左よ。逆方向に飛べばまた帰ってこれるはずだから。」
「ふむ。」
ライアスは納得した。

「えっと、こういうときは…ありがとう?って言えばいいんだっけ。」
「いえいえどういたしまして。」
カミュは微笑みながら応じる。
「ドウイタシマシテ?」
またもライアスにとっては聞きなれない言葉だった。
「ありがとうって言われたらそう返すんだよ。お約束みたいなもん。」
「そうか。アリガトウ。」
ライアスは言い慣れないお礼の言葉をカタコトで言うと、酒場を出た。