深夜、ライアスは目が覚める。
イブナクは何故か壁を背にして床に座り込んで眠っていた。
「ベッド以外の場所で寝る奴もいるのか、人間界は変な奴が多いのな。」
小声でつぶやく。
イブナクは単に同じ年頃に見えないこともない女性と同じベッドに寝る勇気が出なかっただけなのだが、それはライアスが感知するところではなかった。

ライアスは音を立てないように、イブナクの家をそっと出る。

「東、ね。」
東ってどっちだろう。
ダークに拾われたばかりの頃、人間界についての知識を教えてもらった。その記憶をフル稼働で思い出す。
「人間は、酒という飲み物を飲み、酒が提供される場所には人が集まる…、だっけか。」
酒場にでも行って聞けばなんとかなるだろうか。

灯りが点いている建物が数軒あり、そのどれもから賑やかな笑い声が聞こえてくる。
そのうちの1軒を無作為に選び、ライアスは勝手に入った。
酒場の客たちの視線がライアスに集まる。