やっちまった感漂う顔をしていたライアスに、20歳前後の(見た目をした)人間の男が話しかける。
「君は天使?悪魔?僕はファスって言うんだ。」
おそらく翼の形状が普通の悪魔と違うせいでファスにはライアスが天使か悪魔か判別ができなかったのだろう。
ライアスはどう答えたものかと無言で思案する。悪魔だと言って袋叩きにされては困る。
アフストイが色欲の屋敷で言っていたではないか。人間にとって、悪魔は恐怖の対象であるのだと。
「翼を見る限りは天使っぽいけど…左右の色が違うんだね。」
「え…あぁ、これが原因でいじめられたこともあったかな…。」
もうだいぶ古い…ような記憶だ。翼の色で魔界ではだいぶいじめられたが、面倒だったので言いたい奴には言わせておいた。
育ての親に近かったダークは、ライアスの翼の色については言及しなかったし、誰かに何かを聞かれても特に何も言ってなかった気がする。
いじめのほうも、嫌味を言われて反応をしないライアスに飽きたのか、すぐに翼のことを言う悪魔はいなくなったが。

人間を攻撃するわけでもなく普通にファスと談笑をしている様子に村人は安心したのか、次第にライアスの周りには人だかりができていった。
「おれ、ガルフォート。どこから来たんだ?」
「私はカミュ。可愛いのね~、うちに来ちゃいなさいよ!」
「お兄ちゃん?お姉ちゃん?どっち?」
「うわ、わりぃけど質問は一人ずつで頼むぜ!俺は人間界のショウトクタイシと同じ耳はしてないんだ!」
「極西の国の聖徳太子伝説を知ってるぞい!ますます何者かわからんぞい!」

ライアスが適当に相手をしているうちに人だかりがすごいことになっていた。

イブナクが麓の村に駆けつけたときには、村の広場が祭り状態になっており、首をかしげることになった…。