一方、ライアスの方は人間界の太陽の光に目が眩みそうになりつつも、上空を飛んでいた。
陰鬱の森とは違う場所に来てしまったことくらいはわかった。
「森の上を飛んでいたはずなんだが…。ここはどこだ?」
空が、蒼い。空に白いものが浮かんでいる。綿菓子のような白いもの。美味しそうだ。

下に犬小屋のような小さな家が数軒見える。
豆粒のような人々がライアスを指さしているのが見える。
ライアスは興味をそそられ、村を目指して降りてみた。
村人は村人で、羽と尻尾のある人間として認識していた。
ライアスの方は村人を人間として認識している。

「なんで人間がこんなところにいっぱいいるんだ?ここはどこだ?」
村人の1人に聞いてみた。
「なんで人間がいっぱいいるのかって言われても、人間の村だからってしか答えようがないよ。」
「…そうなのか…人間界なのか…?」
ライアスはぶちぶちと独り言を漏らす。
「ここは麓の村と呼ばれているよ。村の名前なんて決めるの面倒だってんで、村長が麓の村ってことにしたんだ。」
見た目だけはライアスと同世代の少年が答える。

ライアスはイブナクの言葉を思い出す。
『魔界と人間界はそんなに離れてないってこと。この森は魔界と人間界の境目が曖昧なんだ。』
「あちゃー…やっちまった…。」
ついでに、ノアが言っていた言葉も思い出す。
『人間界への通路が開かれるのは限られた時間だけだ。3つの月が重なる日だな。』
ライアスが飛び立った魔界の空は、3つの月が重なっていた。