ドリウスが目覚めた頃、アフストイもライアスもまだ眠っていた。

気分転換に魔法書以外の本も広げてみる。
異世界の絵本が面白く、ドリウスはそれが気に入った。
その絵本に紛れて、1冊、装丁は豪華だが、古いノートがあった。
何のノートかはわからないが、とりあえずドリウスは広げてみる。

誰かの日記らしい。誰の日記かまではわからない。とりとめもない魔界の日常が綴られていたが。
ある一節に目が止まる。

『子供が産まれた。名前だけつけて魔界に放つことにする。通名をライアスと名付けた。』

「こ…これ…これ…は…。」
いつもニヤニヤとしているドリウスだがこのときばかりは驚愕に目を丸くするだけだった。
いつの時代の日記かは不明だが、もしかしたらそこで惰眠を貪っているライアスの親の日記かもしれない。
「ライアスの親はこの城にいた誰か…か?」
ライアス本人は自らの生い立ちを積極的に調べようとはしていない。
ライアスにとっては【めんどくせぇ】ことなのだろう。

ただ。
ドリウスはライアスの出生に興味があった。
ライアス本人でさえ知らないことを知ってしまったことに対する罪悪感はない。

ドリウスは日記を読み漁ったが、結局誰が書いた日記なのかは不明で終わった。
他にも日記はあるかもしれないが、そこまでの労力を払う気にもなれなかった。
ライアスと血の契約をしたドリウスとしては、さっくりと魔界の神になってもらってドリウスに力をくれれば何の問題もないのだ。

ライアスの魔力は、ライアス本人が思っているほど少なくはない。
アフストイの血の契約に耐え、ユーギットの血の契約にも耐えた。
この事実から魔力の器が下級悪魔だった頃から大きいということだ。

ドリウスは、ライアスが神になるに賭けるのは分の悪い賭けではないと思っていた。